「あれ? でも夜って言ったら夜々さんも……」


「それは言わないでくれ。俺も途中で気づいて必死に掻き消したことだから」
 

……流夜くんの顔色は一気に悪くなる。どれだけ夜々さんと険悪なんだろうか。


「う、うまくいかない……」
 

ネックレスなんて初めてで勝手がわからない。


まごついていると、流夜くんの手が伸びてつけてくれた。

 
首元に収まった桜と月。


「……大丈夫か? 気分悪くないか?」
 

まだ心配してくれる流夜くんに、首を横に振った。


気分の悪さなんてないし、あるのは嬉しさだけだ。
 

あれほど、首になにかが触れるのだけでも怖かったのに。


……やっぱり、幸せな方に変えてくれたのはこの人なんだ。


「ありがとう。宝もの」


「………」
 

私の嬉しがりように安堵したのか、流夜くんは微笑んでくれた。
 

大事なものも、ことも、一日ごとに増えていく。
 

残酷なんて世界のどこにだって転がっていると言った流夜くん。


私もそうだと思っている。


けれど、それと同じ――それ以上に、幸せはあふれているのかもしれない。
 

大すきな人が今、傍にいてくれるように。