もう一度、と口づけを繰り返して――咲桜が逃げないように、逃げたいと思わないように……大事に触れた。
 

この子は、一生の宝ものみたいな子だ。


……俺の幸せの、象徴みたいな子。
 

こんなに感情が動いたのは初めてだ。


「あ」
 

俺が声をあげると、咲桜が小首を傾げた。


「? どうしたの?」
 

忘れるところだった。
 

むしろ在義さんの件がごちゃっとしていて忘れてしまっていた。


「咲桜、これ」
 

荷物は少ないけど申し訳程度に持っている鞄から取り出したのは、小さな箱だった。


「? なに?」


「いや……こういうのが大丈夫かわからなかったんだけど、咲桜に合うかと思って」