「……!」
 

咲桜から動揺はありありと感じられたが、していいと言ったのは咲桜だ。


目が泳ぎまくっている。


「キス。していいんだろ?」
 

わざとらしく問うと、咲桜は顔を真赤にしてきた。


「二回ともお前を怒らせたみたいだから。……今度はこっち」
 

頬に置いたままの親指で、咲桜の唇をなぞる。


一度ぎゅっと瞳を瞑られたけど、抵抗はなかった。


……薄ら開いた瞳の、透明なこと。


「……こ、この前は怒ったけど……最初のときは、怒ってない、と思う……」
 

精一杯の弁明に、思わず俺の口元が綻んだ。


「なら、またしても怒らない?」


「………」
 

困った様子の咲桜は視線を俺から逸らして、助けでも求めているみたいだ。


「……こっち向け」