「……うん」
 

在義さんからのゆるしがなかったのがショックなのか、咲桜はまだ浮かばない。


せっかく楽しい日だったのに……そんなことが口から聞こえそうだ。
 

……そういう淋しさを取り除くのも、俺が咲桜に望んだ位置だ。


いつも笑顔でいてほしいから。


「また、デートしよう。咲桜の行きたいところ考えておいてくれ」
 

そう言うと、咲桜は瞳を見開いた。


「え……いいの?」


「いいに決まってるだろ。俺は咲桜以外とデートなんて出来ないみたいだからな」
 

昼間に咲桜に話した、学生時代のことは真実だ。


誰かと一緒にいて、この時間の永続を願ったのは初めてだ。


咲桜と一緒だと、早く署へ行きたい、なんて思えるわけがないと気づいた。


むしろ咲桜と一緒にいたいのだと。


「で、でーと?」


「うん? 違ったか?」
 

その表現は嫌だったろうか。訊き返すと、咲桜は首を横に振った。


「ううんっ! う、嬉しい! ま、またよろしくお願いします」
 

律儀に頭を下げた。