「………」
 

まさかあの在義さんが逃げるとは……。


やはり親バカも大概だったか。
 

華取家まで来たものの、在義さんがいないのではどうしようもない――……いや、咲桜と二人きりでいられる、とか邪なことを考えるな。
 

自分を戒める。
 

お隣の目は今日も光っているのだ。あまり遅くまではいられない。


ぶんぶん頭を振っていると、咲桜が不審そうに見てきた。


「どうしようか……流夜くん、せっかく来てくれたのに……」


「あー、気にするな。また出直す」
 

しょぼんとしてしまった咲桜の頭を撫でる。咲桜に非はないのだから。


「でも……やっぱり、反対されるのかな……」