「えっ、お仕事になったの? 大丈夫?」
 

咲桜と華取の家に帰るなり、在義さんから咲桜に電話がかかった。
 

帳場が出来てしまい、帰れなくなったそうだ。


「ううん、日を改める。……うん、気を付けて」
 


通話、終了。


「……だそうです」
 

咲桜が悲しそうな瞳で見てくる。


「………」
 

逃げたな。

 
直感的にそう思った。


電話の向こうから聞こえた在義さんの声が若干上ずっていた。


帳場に臨むときの緊張感のある在義さんの声とは少し違っていた。


電話による聞こえの違いを差し引いても、どこか焦っているようだ。
 

そして家に入る前に、吹雪に連絡を取ってある。


現在この県内で、捜査本部が出来るような事件は発生していない。


まさかと思って確認しておいたら、見事にはまってくれた。
 

俺がなにを話しにきたのかを悟って、仕事だと言って逃げたのだろう。