ぺたりと坐りこんでいる笑満は、しばらく呆然としていた。


それから、ふと口元を歪めた。


「やっぱり……あたし、遙音くんには逢っちゃダメだった……」


「はるおとくん……?」
 

その聞きなれない呼び方に、私は眉を寄せる。


笑満は夏島先輩のことを、『先輩』と呼んでいたはずだけど……。
 

がばりと笑満が顔をあげた。


今にも泣き出しそうな顔で、傷ついた瞳をしていた。


「どうしよう咲桜っ、遙音くんに昔のこと、思い出させちゃうかもしれない……っ」
 

私の制服を摑んですがってきた手。


私はその手を握り返した。