つと、今度は指が咲桜の唇の端に触れる。
「いいえっ! とんでもない!」
咲桜はぶんぶん首を横に振る。
「もう慣れてくれていいのに」
「無理だよ⁉ 簡単に言うけどこの距離だってまだドクドクしてるんだから!」
……だからなんでドクドクしてんだよ。
ドキドキしてほしいんだけどな。
「……まあ、咲桜からしたくなったらしてくれればいい」
「要求レベル高すぎるよ!」
今度は怒らせた。
「なんでそう平然と出来るの! 私をなめんな!」
「そうしたいと思うからだが……」
平然としているつもりもない。
実はこっちだって結構心臓に負担かかっている。
トシの分だけ、隠すのに慣れているだけだ。



