「……? なにが?」
咲桜はきょとんとしている。
「咲桜と一緒に出掛けたこと、ないしな」
「え……」
一瞬で、咲桜の頬だけでなく、顔全体が朱に染まった。
「えっ……! い、いいのっ? そ、外で逢っても……」
……ああ、そういう心配を咲桜はしていたのか。
確かに現状、二人きりで逢うのは色々と問題かもしれない。
けれど、そういう『倫理違反』は覚悟の上で、俺は咲桜に手を差し出したのだ。
咲桜がそこをわかっているとは言い切れないけど、そういう思考を導くのは、自分の役割だと思っている。
咲桜が手を、重ねてくれたから。
「少し離れた場所なら問題ないだろう。俺も気づかれないようにするから」
「ほんとっ? そ、それって……」
そこまで言って、咲桜は口ごもった。
「ん?」
「えと……う、嬉しいなあ、て」
照れたように笑った咲桜。何か誤魔化しているように見える。
……が、それも可愛い。
「……咲桜、眼鏡取って」



