朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】



「……? なにが?」
 

咲桜はきょとんとしている。


「咲桜と一緒に出掛けたこと、ないしな」


「え……」
 

一瞬で、咲桜の頬だけでなく、顔全体が朱に染まった。


「えっ……! い、いいのっ? そ、外で逢っても……」
 

……ああ、そういう心配を咲桜はしていたのか。
 

確かに現状、二人きりで逢うのは色々と問題かもしれない。


けれど、そういう『倫理違反』は覚悟の上で、俺は咲桜に手を差し出したのだ。


咲桜がそこをわかっているとは言い切れないけど、そういう思考を導くのは、自分の役割だと思っている。


咲桜が手を、重ねてくれたから。


「少し離れた場所なら問題ないだろう。俺も気づかれないようにするから」


「ほんとっ? そ、それって……」
 

そこまで言って、咲桜は口ごもった。


「ん?」


「えと……う、嬉しいなあ、て」
 

照れたように笑った咲桜。何か誤魔化しているように見える。


……が、それも可愛い。


「……咲桜、眼鏡取って」