朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】



「うん。……あ、それでね、少し服を変えたいって思ってる。首が詰まってるのばっかりだったから。今度笑満と行ってくる」


「ふーん」
 

すっと、宙に留まっていた俺の指が肩に流れる咲桜の髪を絡め取った。


咲桜はびっくりしたようだが、恐怖しているようには見えない。


むしろ照れている。


「……大丈夫なんだな」
 

確かめるように髪に触れた指先は、すぐに離した。


なんだか色々と危ない気がする。


「あー、この前困らせたよね。ごめんね」
 

俺の前でパニックを起こしたときのことだ。


咲桜に謝られると、こちらの方が申し訳ない気分になる。


「心配はしたけど困ってはない」


「……ありがとう」
 

咲桜は微苦笑を浮かべた。


本当に、どれだけ頑張っているのだろう、この子は。
 

そしてなんだか、松生に妬けてしまうのだけど。


「俺とは行ってくれないのか?」