「さーて。笑満ちゃんの教室行こ?」
「え、あたし?」
ふと遙音がそんなことを言ったので、松生は驚いた声を出した。
「俺も学内で笑満ちゃんに逢いたいし、笑満ちゃんの周り公認の友達になりたいから。あの学年主席とかに挨拶させてよ」
「頼?」
一年首席は、日義頼だ。
「うん。というわけで、俺ら先に行ってるから。咲桜はゆっくりしておいでー」
「えっ、ちょっと遙音くん! あ、咲桜、先に戻ってるね!」
遙音は松生の手を摑んで連れ出してしまった。
松生は慌てつつもどこか慣れた風に咲桜に言葉を残して出て行った。
「……まるっきり嵐だな、あいつら」
「そうですねえ……。でも、よかった」
咲桜の不安は、一つ解消されたようだ。
「咲桜。おいで」
俺が椅子に座ったまま手を向けると、咲桜は自分の手を重ねる。
咲桜が見下ろす格好だった。



