そんな言葉が頭に浮かんで思わず抱きしめ返したときに気づいた。


……また眠っちゃってる。


やっぱり眠いことは眠かったみたい。少しだけ、苦笑がもれた。
 

大分すきの、上はなんなんだろう。


抱き寄せていると、指先が流夜くんの髪に触れる。


流夜くんはよく頭を撫でてくれる。


私は小さな頃から背が高い方だったから、新鮮な感覚だった。


ただ嬉しくなる。


……そっと、手のひらで髪に触れてみる。
 

……誰かをすきなることを、自分にゆるさないでいた。
 

自分が生きていることに否定的だったし、自分の命は在義父さんへの恩返しに使うつもりだった。


だから、すきな人はいらなかった。


作らなかった、ではなくて、いらなかった。
 

でも今、私の傍には流夜くんがいる。
 

……ひとつだけ、思いあたった言葉がある。


これが私の感情なのだろうか。




《流夜くんを、私が幸せにしたい。》




「……これで、いいのかな……」
 

流夜くんと同じ気持ちは、これなのかな。
 

……そうだったら、いいな。
 

腕の中で眠る優しい人が目を覚ましたら、訊いてみよう……。