食いついて来た。


悪かったな、甲斐性なしで。


それからわざわざお前たちにエサを与える気はない。


「さあな」
 

うそぶいて、しかし確信めいたものが芽生えていた。
 

咲桜がいないから眠れていない。それはたぶん当たりだ。
 

……なんだ、それ。


咲桜は生徒で、偽物の婚約者で、いずれは恋人を見つける身。


そんな、咲桜を自分のものみたいに言っていいわけがない。
 

たとえ近い距離を、今は咲桜がゆるしてくれていても。
 

咲桜を恋人に出来たらいいのに。
 

……そんな言葉が頭の隅に浮かんで、目を閉じることで消した。
 

あの子に、自分の抱える黒々まで背負わせては、いけない。