「……遙音くん、憶えてるのかな……あたしのこと」


「私は憶えてるんじゃないかなって思うよ。笑満にだけ呼び方違うし、ただの後輩に逃げられただけで凹むような落ち込み具合、流夜くんが報告してくるわけないし」


「やっぱり流夜くんなんだ」


「あ」
 

はめられた。いや、自分からはまったのだけど。


「仲よさそうでなによりだよ。……ごめんね、旧校舎から出るところでばったり逢っちゃって……あたし、言うって決めてたのに逃げて……夜々さんのとこも、行けなくなっちゃうし……」
 

放課後に夜々さんを訪ねる件、笑満から「やっぱり今度にする」と言われてなしになったのだ。


そのときは疑うことはしなかったけど、先輩から逃げたことで自身にもショックがあったようだ。
 

意に反して逃げてしまった。
 

決意したのに。現実が目の前に迫ると、足は引いてしまう。
 

……うん。