最初っからひっかかってはいた。


咲桜の存在は生徒に収まりきらないし、在義さんの娘だから護る、だけでは器が小さすぎる。


……そのうち、咲桜にはキスしてしまうし。


咲桜が夢うつつで憶えていなかったから明言はしていないけど、どうにも触れたくてしょうがなくなるときがある。


けれど、自分はあくまで偽物婚約者。


立場的に咲桜を護るためだけの存在。
 

駄目だ……足りない。咲桜の傍にいていい理由がない。


「……考え込んじゃったよ、あいつ」


「愉快だねえ」
 

楽しそうな幼馴染たちに目を遣ると、二人揃って吹き出している。


「はははっ、りゅうが情けねー」


「くくっ、ちょっと、どこにそんな面白要素隠してたのさ。愛しちゃうね、まったく」
 

……自分は今どんな顔をしているのだろう……。


本当イラつかせるの得意だよなあ、こいつら。


「最近寝れねーんだよ。前にも増して」
 

イラつきが声にも表れると、吹雪が軽く瞳を瞠った。