しをひく


 顔に張り付けたままだった笑顔の仮面は剥がれ落ち、時おり思い出してはみてもそれはもう私の顔に戻らない。

 誰かが言っていた、笑顔は仮面。悲しいことを悟らせないで無為な詮索から逃れられる鉄の仮面。

 それを手放した私には、感情を隠すモノがなにもない。

 無表情は無力なんだ。

 すぐにとれてしまう脆いもの。

 だからこその仮面はもう手元にはない。

 笑顔の作り方を私はもう忘れてしまった。