ポケットに常備している小さ目のオペラグラスを取り出し、カーテンを影にしながら教室を覗く。


正面から見えるとは言え、建物同士の距離はある。


運のいいことに、華取咲桜は窓際の席にいた。


しかしそこが華取咲桜の席ではないようで、一年首席の日義頼が机に腕をついて寝ているところに、松生笑満とともに集まっているようだ。


――一瞬、息を呑んだ。
 

いや、と一つ頭を振る。


今はそこが問題ではない。


華取咲桜の後ろ姿は、旧館で見たものと一致する。


長い髪。高い背丈。


……下手したら身長は俺と同じくらいあるかもな。


俺はまだまだ成長期ですが。


神宮も否定はしなかったけれど、先ほどの影は華取咲桜で間違いないようだ。


確か華取咲桜は、部活は無所属だったはず。


オペラグラスを仕舞う。


取りあえず、帰りの時間を待とうか。それまでは、華取咲桜や友人の学内での様子なんかを集めるかな。