「………」
 

――華取咲桜。名の記された記憶のファイルをめくる。
 

華取在義の一人娘。


母親は四歳のときに亡くなっている。


目立つことはないが正義感が強く、間違いと思えば教師相手でも退かない肝がある。


大人しそうな外見だが、それに似合わない通り名もあるそう。


それとは別であるが、二宮さんに言わせれば、評価は「在義の娘」。


炎の塊、太陽の塊と警察内部で評される、華取在義の愛娘。


つまりは華取咲桜もその資質があるということ。


「……炎の塊、ね」
 

それが華取さんに匹敵するレベル、とか言われたら引くしかないけど。


俺の中での華取さんの評価はそういうもんだ。
 

まずは遠目に観察してみるか。
 

一年生の教室は本館の二階。


華取咲桜のクラスを正面から見える別館の空き教室に入った。


別館は、生徒の出入りは自由。


特に問題の起きない藤城学園では、鍵はあってないようなものだ。


いくら大きな問題がないとはいえこのご時世、こいうとこ、ちょっと改善の余地あると思うけど。