学校での仕事を終えて、アパートへ戻った。


華取家は、歩けば十五分程度の近さだった。


昨日は華取の手料理をごちそうになり、今日は夕飯の分までお弁当をもらった。


なんだ、この青天の霹靂みたいな状況は。


普段料理なんてしないだけに、自分の状況が恵まれ過ぎていて怖い。
 

幼馴染の一人が、最寄りの上総(かずさ)警察署にいる。


俺は、夜はいつもそこへ行って、過去の資料を漁っていた。


晩飯なんかテキトーに済ませていたから、食事が卓に並ぶ、なんて現象は久しぶりに見た。
 

華取からもらった夕飯を広げたところで、チャイムが鳴った。


誰だかわかっているので、出迎えはしない。


幼馴染からここの合鍵を勝手にもらっている毎度の客人は、いつものように勝手に入ってきた。


「よー、じんぐー。メシ持って来てやったぞー……なっ⁉」
 

入って来たのは藤城学園の制服の男子生徒、二年の夏島遙音(なつしま はるおと)。


藤城首席と呼ばれるほど頭のいい奴だが、ワケありの知り合いだ。
 

スーパーの惣菜が入った袋を手にしていて、俺の前に料理があるのを見ると同時に固まった。


「また来たのか、お前」