旧館を出た私は、先生がいた二階の資料室を見上げた。
 

朝は、昨日逢った人が本当に『神宮先生』なのか信じ切れていなかったけど、帰り際に注意されてしまった。


「あまり学内で見るな。話があったらいつでも聞くから」と。


……ガン見がばれていて少し恥ずかしかった。
 

笑満に話すことを反対されなかったのはよかった。


笑満に隠し事はしたくないし、かと言って先生に嘘をついて話してしまうのも嫌だった。


最初から私の中には、笑満に『話す』以外の選択肢はなかったから。
 

……先生のやっていることは、聞いたことの半分も飲み下しきれていないけど。
 

でも、マナさんが仕組んだ相手が先生でよかったと、心のどこかが思っている。
 

はっきりとは言えないけど、先生は安心出来る人な気がする。


……あ、ご飯の好き嫌いとか聞いておけばよかったかも。