「咲桜、帰りは大丈夫だったか? また変な要求をされたり……」


「してないよ」
 

心配性な在義父さんに笑い飛ばし、レンジのスイッチを入れてから冷蔵庫から麦茶を用意する。


今日はあったかい日だったから、冷茶がいいかな。


……そんな日に着物なんか着せられた私は、当然のように汗だくになったよ。


着物は帰ってからソッコーで和室に干した。


「まあ、びっくりしたのは神宮先生だったことだけど――どうかしました?」
 

先生がまだそわそわしている。


「や、何と言うか……急に来て迷惑じゃなかったか?」


「父さんの同僚さんが急に来ることはよくあるから大丈夫ですよ?」
 

何しろ在義父さんは時間の感覚が狂う仕事をしているのだ。


今日のように、疲れまくった同僚や部下を、夕飯を食べさせる目的で連れてくることはよくあった。


なので、私の料理は元々作る量が多い。


在義父さん自身が結構滅茶苦茶な量を食べるからでもある。


事件が起きれば定時でうちに帰る事なんて出来なくて、昼間に着替えを取りに来るだけ、ということもあるので、うちでは常に冷蔵庫にすぐ食べられるようにしてある食料が入っている。


父さんはそれをそのまま仕事場へ持って行くこともある。