「流夜くんにね……」


「……はい」
 

神妙な顔で応じる。


マナさんの顔からもからかいの色が消え、真剣だった。


「流夜くんに、ご飯作ってあげてほしいの」


「はい。……え、ごはん?」
 

とは、食事のこと? 


私が間の抜けた声を返すと、マナさんはため息を吐いた。


「流夜くん、家事能力がろくにないのよ……。いえ、やろうと思えば何でもやれる、スペックのやたら高い子なんだけど、気の向かないことには本っ当に無関心で。まあ、あの子もちょっと特殊な生い立ちをしてるからって所為もあるんだろうけど。だから中学も高校も寮があるところにぶち込んだわ。流夜くんに関しては、本当にあたしが育ての親の一人みたいなもんだからね。申し訳なさが先に立つわ……」


「………」
 

あの傍若無人なマナさんに嘆息させるだなんて。


今度は別の意味で唾を呑み込んだ。