在義さんはそのまま仕事へ向かうと言う。


やっぱり無理に時間を作ってくれたようだ。


俺は在義さんの了解を取って、華取家へ行くことにした。


とにかく今、咲桜に逢いたかった。
 

念のため咲桜にメールをすると、「待ってますね」との返事があった。


……そのあとに「話は聞かせてもらいますよ」とも書かれていた。


かなり気にしているようだ。


まあ、気にさせるように言ったし。
 

華取家の駐車場に車を止め、玄関のチャイムを鳴らしたときだ。


「あら、咲桜ちゃんに御用ですか? ――神宮先生」


「⁉」


『神宮先生』――そう呼ばれ、声の方を見た。


今はメガネを外し、学校とは外見を変えているのにその呼び方。


――誰だ?
 

声は隣の家の門扉辺りにいた女性からだった。


「それとも、今は神宮さんってお呼びしましょうか?」
 

ふわふわした落ち着いた色の髪。


小柄で幼い顔立ち。


白衣ではなくストールを腕にかけた彼女は――養護教諭の朝間夜々子(あさま ややこ)だ。