「……やっぱり流夜くんが婿でいいな」


「お前気ぃ早過ぎだ」
 

なにやら掛け合いのようなことを言っている師匠たち。


手にしたままだった手紙を畳んだ。


これが咲桜に見せられる日は、来るのだろうか。
 

それは在義さんの一存次第だ。


「……流夜くん。一つ確認しておきたい」


「はい」
 

封筒に戻した桃子さんの手紙を手に、俺は前を向いた。


在義さんは真っ直ぐに見てくる。


「咲桜はこういう子だ。それでも――例え偽ものでも、婚約者でいられるかい? 春芽くんが言い出したことも、今なら取り消せる」
 

在義さんの提言に、俺は一度瞼を伏せた。


開いた視界の在義さんは、問う眼差しのままだ。


迷いは、俺には必要ない。


「その必要はありません」