朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



出逢ってから初めて見る笑顔。


その笑い方も、神宮先生の頼りないものとは違っていた。
 

なんだかすごく、大きな存在に感じられた。


「じゃあ華取、さっき話した通りにな。他のことは言わなくていいから」


「わかりました」
 

神妙な顔で肯き合う。これから神宮先生と二人で、あのマナさんを騙すのだ。


ついでに在義父さんも。







「はっ? 咲桜の学校だったのか?」
 

同じ学校の生徒と教師だって神宮先生がばらすと、マナさんよりも在義父さんの方が驚いていた。


そして、「あー、そっか。流夜くんも藤城だったかー」と呟いている。


「はい。なので、正直言ってこういう座にあることも問題なのですが」
 

在義父さんの隣で、私は口を引き結んでいた。


下手なことは言うなという先生の教えを貫くのだ。


先生は頭がいい。私なんかより何手先も、何十手先も読んでいる。


ならばここは先生に任せるのが最善だと思う。


「……春芽くん」
 

在義父さんがマナさんを睨んだ。


マナさんがそんな些細な情報、知らないわけがないのだ。
 

案の定マナさんは、にっこり艶やかな笑みを見せた。