朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



「それは俺が訊きたい。確かにお前は「家族になる」って言ってくれたよ。でも、それはちゃんと咲桜の意思あっての言葉なのか。もし一時の同情なら、本当に忘れてほしい」
 

静かな声で言われて、私は軽く身を引いた。
 

右腕に抱き付いたとき、思い出してかけていた。


自分の言葉。


そして、流夜に抱き付いたこと。


私……言ったな。


だんだん記憶が帰ってくる気配だ。


「………」


「よし、忘れろ。俺もそうする」
 

波に流されて出た言葉なら、本気にしないうちに消してしまえばいい。


流夜くんはそういうように、また背を向けようとした。


「やだ」
 

私から出たのは、頑固な声だった。


「咲桜?」
 

不審そうな声と共に流夜くんが振り返る。


真っ直ぐ、見上げる。


「私、一度言ったことの責任は取るよ」