朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



「……もし本当にそうなら、淋しかったのは、咲桜が自分で言ったことを憶えてなかったからだと思う。その前のことで、淋しいことなんてない」


「……私、なに言ったの……?」


「……今は気にしなくていい」
 

ふいっと、流夜くんはそっぽを向いてしまった。


そ、そんな言いたくないようなことを言ったの⁉


「別に悪いことを言われたわけじゃない。だから、気にしなくていい」


「………」
 

――そこで下がったら、私ではなかった。


在義父さんの娘ではなかった。
 

私に背中を向けようとする流夜くんの腕を摑んだ。右腕。――あれ?


「わ、わたし――」
 

が、
 

言葉が頭から飛び出しそうだ。けれど、明確ではない。