朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



「愛子たちが戻ったら、同じ学校の生徒と教師だって言う。けど、あいつがそれで退くと思うか?」


「思わないです」
 

むしろ楽しむと思う。あの人は。


「そのくらい禁断の方がスリルあって楽しいじゃない」とか。


ものすごくいい笑顔で言いそう。
 

神宮先生も同じことは想定しているようだ。続ける。


「だろ? だから、立場上正式な婚約とかは無理だけど、断固断ることもしなければいい。俺に任せておけ。お前はただ、今回の話を断らないのと、けれど正式には受けないっていう二点だけ言ってくれればいい。あとは俺が誤魔化す」


「えと……それではなんだろう、私は神宮先生の腕を折る必要もないのかな?」


「ねえよ。物騒な考えはやめろ」


「……先生、ちょっと待って。あまりに言葉が神宮先生じゃなさ過ぎて対応出来ない……」
 

私は今更だけど、額に手を当てた。


あの神宮先生がこんな言葉遣いをするなんて……。


特別懐いていたというわけではないけど、嫌な話も聞かないし嫌な気分になる対応もしないし、授業はわかりやすいと評判はいい先生だったから、この落差というか……衝撃が収まらない。


「……わかった。学校で話しているように話せばいいのか?」