ぼんやり目を開けると、すぐ傍に流夜くんの顔があった。


驚きが過ぎて悲鳴もあげられなかった。


うーん、やっぱり綺麗な顔だち……。


頭がまわらなくて、そんなことしか考えられなかった。
 

私が目を開けたまま固まっていると、流夜くんが少し唸ってのろのろ瞼を持ち上げた。


「……さお?」


「………」
 

寝起きの声はやたら甘い。


心臓が、さっきまでとは違う音を立て始める。


流夜くんはしっかり目を覚ましたようで、瞼をこすっている。


「気分はどうだ? 悪くないか?」
 

その問いかけに、私は昨夜あったことを思い出した。


抱えていた黒々としたものを全部吐き出したのだ。


流夜くんはそれを抱きしめてくれて――。


「だいじょうぶ、です……」
 

ずっと、傍にいてくれたのだろうか……。


私が、在義父さんの娘ではないと知っても?


「それならよかった。一緒の布団で寝てしまって悪かったな。どうにも解けなくて」
 

苦笑気味に、流夜くんは自分の右腕を示した。


そこにはしっかり巻き付いた私の腕もある。


…………え。


「わあっ! す、すみませんっ」