朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



「残酷なんて世界のどこにだって転がってる。お前も俺も、たぶんそれに近づくのが早くて、残酷性が目に見えて強いだけだ。咲桜を否定する要素になんかならない。だから、胸張って生きろ。頑張らなくていいから、胸張っていろ。俺や在義さんや、松生たちの愛情を素直に受け取っていればいい。――お前は、愛されているよ」
 

大丈夫。


また、そう繰り返した。


「せん……流夜くんも、なにかあるの……?」
 

戸惑いに揺れている瞳と、砕けて来た口調。


俺は素直に答えることにする。


「少しばかり、俺も変わった生まれをしているからな」


「生まれ……?」


「ああ。……咲桜がもう少し大丈夫になって、そのとき知りたかったら教えてやるよ」


「……今は、ダメなの?」


「駄目。さっき大泣きしたばかりだろ。俺のことまで抱え込まなくていい」


「やだ」


「やだって……」
 

子供っぽい反応に、今度は俺が当惑した。


でも、大人びた咲桜の口調と態度を多く見ているから、こういう幼い反応を見る度、心をゆるしてくれるような気がしてしまう。