『よー、りゅう。そっち雨すげーんだって? 大丈夫かー?』


「うるさい」


『あれ、いつもより声が辛辣なんだけど』
 

辛辣にもなる。


せっかく可愛い寝顔を見ていたのに。


音を立てないように扉を閉めて話す。


「なんだよ。今日は吹雪んとこ行けなくても文句言われないと思うんだが」


『言わねーよ。反対にふゆは署から帰れなくなってるみたいだしな。少し情報交換しねぇ?』


「あいつは……。いつもの範囲でいいんならな」


『おっけー』
 

明るい降渡の声に、後ろ髪を断ち切る。


あまり見ていてばかりでは咲桜も嫌かもしれない。


パソコンを置いたままの机に戻る。
 

いつもの範囲というのは、あくまで俺が知っている情報かつ、警察内部に関わって知ったことは除外する、というもの。


同じように降渡も、探偵業関係で知りえた個人情報は示さない了解がある。


時と場合によってその境界は揺らぐけれど。
 

降渡の質問に答えたり、訊きたいことも訊いておく。


咲桜が目を覚まさないように声はいつもよりひそめていた。


「……せんせい?」