朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



華取在義の娘、という意味か……。


……しかし、県警のトップの娘と縁談持ちかけられるって、本業学者さんって特別な位置なのかな? 


考えてみたけど、在義父さんが家に連れてくる同僚とは知り合いになることはあっても、父さんの職業を『公務員』の表現以外は、クラスメイトにも言わないように育てられた。


警察の世界に踏み込んだことのない私にはわからなかった。


「華取、お前も乗り気なわけではないんだろう?」


「全然。仕組んだのがマナさんじゃなかったら取りあえず脱走してます」
 

それ以前に、ここがどこだかわからないけど。


神宮先生は一つ肯いた。


「なら利害一致する。華取、お前からも断ってくれ。お互いで嫌だと言えば愛子もこれ以上は言わな――」


「? 先生?」
 

妙なところで言葉を切った神宮先生に呼びかけた。


先生は思案するような顔をしていたと思ったら、唐突に訊いて来た。