先生はまだ正座しているから、私が見下ろす格好になる。


「あ、いや……何か、手伝えることはないか?」


「料理ですか? 大丈夫ですよ?」


「……自分の家事能力のなさが情けないくらいだと知った。少し、勉強させてくれないか?」


「先生が調子悪くないなら、いいですけど……」


「そうしたいんだ」
 

うーん。熱は下がったみたいだし、先生がいいっていうのなら、いいかな? 


おかゆはまたあたためなおせばいい。
 

食材を少し調達してきたから、簡単なおかずだけ用意しておこう。


そう決めて、先生にはまず野菜を切ってもらうことにした。
 

ズダン!


「………」


「………」
 

私、先生、ともに硬直。


二人の間の床に包丁が刺さっていた。


……先生の包丁の扱いが雑過ぎてぶっ飛んだのだ。


キラリと蛍光灯の光を反射する刀身を見て、私は唾を呑み込んだ。


ネギ切っただけのこのザマって……。