心配が募って言うと、先生はソファの上に正座して、差し出すようにブレザーを返して来た。
なんでそんな態度を……。
「いや、大丈夫だ。……すまなかった、上着を借りてしまったようで……殺される……」
「なんでですかっ⁉ あの、本当に錯乱してません? 熱の所為で、っていう現象起きてませんかっ?」
先生の言葉の文脈がゼンゼンわからない。
熱の所為で神経やられたとかじゃないよね? 心配過ぎるよ、この人。
「……出来たら今のことは在義さんには黙っててもらえると、俺の寿命は二年くらい伸びると思う……」
「在義父さんが先生の命握ってるんですかっ⁉ どんな状態ですか怖いですよ! 大丈夫です絶対言いませんから!」
私の言葉一つで先生の命が二年も動くなんて、黙っている以外の選択肢こそない。
先生は、本気で安心したみたいに息を吐いた。
「それより、もう遅くなってしまったろう? 送って行く」
「へ? いえ、言われた通り十分しか経ってませんけど……?」
私がここへ来たのは五時前だったから、まだ遅いって言われる時間ではないと思うんだけど。
先生に向けて時計を指さすと、先生が固まった。
「……………すごい時間寝てたと思った……」
顔を手で覆って、先生がぽつりと言った。
あ、ちゃんと寝ていたんだ。



