「遙音がなんか言っていたのか?」
「はい。でも、普段から特に何もしていないで治ってるんだったら、私が来た意味もなかったですね」
華取は背中を向けたまま、苦笑気味に言った。
そんなことない――咄嗟に口をつこうとして、寸前で思いとどまった。
なんだか、在義にぶっ飛ばされそうなことまで口走ってしまいそうだった。
前回は説教だけで済んだけど、在義さんの中で俺は前科一犯の烙印を押されたはずだ。
かわりに心の中で遙音を恨んでみる。
あいつが変なこと吹きこまなきゃ華取がここへ来ることもなかったろうに。
……華取が来てくれたのを嬉しがる自分もどこかにいたので、取りあえず、ありがとう。
けどな。
なんで華取がお前のこと名前で呼んでんだよ。
そんな新たな導火線も生まれてしまっていた。
遙音をシメるか華取に問うか……。
思案していると、立ち尽くしている俺にスポーツドリンクのペットボトルが渡された。
「水分補給してください」