朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



「詳しくはないですけど……私も、笑満と頼以外は、父さんの仕事のことは話してませんし、そういう風に育てられましたから。警察の方には首を突っ込むなという教育方針? と言いますか……。でも、ほんとに父さんの方が色んなとこに首突っ込んでるから、被害者が多いのも知ってますし……」
 

その被害の半分は龍生さんに降りかかっている。


お隣のおねえさんは、『在義兄さんの行動力についていけるのが、龍生兄さんだけだったのよ』と話してくれたことがある。


龍生さんは高校生時代うちに下宿していたそうなので、おねえさんとも親しい。


私はその被害を承知しているので、龍生さんにはいつも感謝しかない。


父さんを見捨てないでくれて、ありがとうございます。


「あの、なんで学者さんをしてるのに先生もしてるんですか?」


「……少しの間、教師をやっている方がいい理由があってな」


「理由?」
 

訊き返すと、神宮先生は思案するように目を細めた。