朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】



私は半眼になって隣へ続く襖を見た。


まったくマナさんは、抜け目ないというか壁が目というか。


どーせ隣では在義父さんが泡喰って止めようとしてるか、もう諦めて明後日の方を見ているのだろう。


娘が言うのも難だけど、父さんがマナさんに勝てるとは思えない。


「わかりました。マナさんに聞かれない方がいいんですね?」
 

私の返事に、神宮先生は神妙に肯いた。


マナさんに対してこの対応と動揺のなさ。


……神宮先生とマナさんが近い関係だと確信出来る。
 

壁に耳あり障子に目ありを地で行くマナさんは、どれだけ尊敬できる存在であっても油断ならない方なのだ。


私に対して弱みを握るとかそういうことはないんだけど、私の父が在義父さんで、その相棒が龍生さんなので、私をネタに被害は二人へ行ってしまうから気をつけねばなのだ。


「お前、何を聞かされてここへ?」


「………」
 

神宮先生に『お前』と呼ばれたことにびっくりして、一瞬返す言葉が見つからなかった……。


先生、キャラが違い過ぎませんか……?


「……華取?」