「誰?」


「アホ。在義んとこの娘(じょう)ちゃんだよ」
 

コン、と軽く降渡の頭に、龍さんの拳が落ちた。


龍さんは華取のことを『娘ちゃん』と呼んでいるのか。


「久しぶりだな、娘ちゃん。ここに来ていいのか?」
 

龍さんはカウンターを出て華取に話しかける。


「お久しぶりです。今日はフライングというか……龍生さんのお店が気になってきちゃいました」
 

首を傾ける華取の隣にいる俺は、鋭い視線を浴びた。


「在義に黙って連れ込んだか」


「今から言い訳するつもり」
 

薄く笑って、華取を席に導いた。


「在義さんに電話してくるから、少し待っててくれるか?」


「あ、だったら私も話して――」


「大丈夫だから」
 

そう言い残して、俺は店を出た。