私はなにか得体の知れないものに怯えながら、お母さんに全てを説明した。



「文句を言うだけで止められたなら、いいじゃない」


「……え?」


「たしかに、あんたがしたことは褒められたもんじゃない。でも、あの事件みたいに行動に移さなかっただけ、よかったのよ。それに、もしかしたら私が殺してたかもしれない、なんて誰でも思うことよ」



それは言い過ぎだと思ったけど、なぜか納得できた。



「人間誰しも一度くらいは誰かを殺したいと考えることがあるの。問題は、それを行動に移すか移さないか。だって、脳内で殺しても罪にはならないんだから」



だんだん、お母さんの考え方が怖くなってきた。


それなのに、私の中にすっとその言葉は入ってくる。



「まあ少し言いすぎたけど……とにかく、そこまで気に病むことはないわ」



お母さんはそう言って、料理を運んできた。


この流れでご飯なんか食べれるか。


そう思ったのに、体はお腹が空いていたようで、私はゆっくりと味噌汁を喉に通した。