黒衣の見た目はそのままに、彼の内面が、変わる。
爽やかな植物のような上品さがぬぐわれて、面に出て来たのは、肉食の、獣。
貴族向けの高級娼婦の子どもたちが預けられる施設から、互いがそれぞれの貴族の家に引き取られて行った、何年も前のように。
貧しく、人に蔑まれながらも、強くしなやかに。
兄妹のように助けあって、何とか生きて来た。
施設育ちだからと言いがかりをつけられ、盗人の濡れ衣を着せられそうになった時も。
野良犬たちに追いかけられ、囲まれた時だって。
リーゼがピンチの時は何時だって助けに来てくれた、頼もしさが懐かしい。
ラファエルの口調に、リーゼの口からそのころの呼び名が紡がれる。
「……ラルフ」
「そう、それで良いんだ。
お前の前では、俺はただの『ラルフ』だ。
『ラルフ』は『リーゼ』が、どんな女の子か世界で一番良く知っている」
そう受け合って、ラルフは、少し皮肉っぽく表情を変えた。
「偽物、って言うなら俺の方だ。
すぐに、ヴァイスリッターの後継ぎに指名されたお前と違って、こっちは、まだごたごたしているんだからな」
隠された当主の息子だから、陽のあたる場所に出てこい、と言われたはずなのに。
実母の生まれに不満があるらしい。
別の勢力から、息子だと認めて欲しければ、敵と戦って勝ってこいと無理難題を押し付けられてこのざまだ、と。
広げたマントの下は、旅装だったのだ。
その装備を一目見て、長旅の予感にリーゼは、声を震わせた。
爽やかな植物のような上品さがぬぐわれて、面に出て来たのは、肉食の、獣。
貴族向けの高級娼婦の子どもたちが預けられる施設から、互いがそれぞれの貴族の家に引き取られて行った、何年も前のように。
貧しく、人に蔑まれながらも、強くしなやかに。
兄妹のように助けあって、何とか生きて来た。
施設育ちだからと言いがかりをつけられ、盗人の濡れ衣を着せられそうになった時も。
野良犬たちに追いかけられ、囲まれた時だって。
リーゼがピンチの時は何時だって助けに来てくれた、頼もしさが懐かしい。
ラファエルの口調に、リーゼの口からそのころの呼び名が紡がれる。
「……ラルフ」
「そう、それで良いんだ。
お前の前では、俺はただの『ラルフ』だ。
『ラルフ』は『リーゼ』が、どんな女の子か世界で一番良く知っている」
そう受け合って、ラルフは、少し皮肉っぽく表情を変えた。
「偽物、って言うなら俺の方だ。
すぐに、ヴァイスリッターの後継ぎに指名されたお前と違って、こっちは、まだごたごたしているんだからな」
隠された当主の息子だから、陽のあたる場所に出てこい、と言われたはずなのに。
実母の生まれに不満があるらしい。
別の勢力から、息子だと認めて欲しければ、敵と戦って勝ってこいと無理難題を押し付けられてこのざまだ、と。
広げたマントの下は、旅装だったのだ。
その装備を一目見て、長旅の予感にリーゼは、声を震わせた。



