「そりゃそうでしょう。いくら見た目が女だからってね、あんたたちの横に景がいたらもう男子寮B確定なんだから。いつまでもブツブツ文句言わないの」
LOSの会場である魔妖高校のグラウンドに向かう道中にて
生身の景が横にいないことに文句を言っているのはもちろんライだ
「うそだろ.....」
その四文字に込められるは途方も無い絶望感
景が行くから行くとは言ったが、その景が犬姿でLOSに参加するとは思ってもいなかった
もちろんそれでも自分も参加するのだが
そうじゃない!!
祭りっていうのは、ワンとしか吠えない犬と参加したって雰囲気なんか出ないんだ
「わんっ」
「うん、どうしたの?」
「ぐるるる」
「そうだよね。景が文句言ってないではよ歩かんか、だって」
腕の中のミニチュアシベリアンと会話する爽馬が辛辣な犬語を通訳する
景は爽馬に抱えられ揺れながら、大人しく彼らの会話を聞いていた
「それにしても波屋さんも景がシベリアンハスキーだって知ってたんだね。いつ知ったの?」
咲夜の問いに、視線を上に泳がせた有姫は思い出すようなそぶりを見せる
「いつだったかしら、1年生の最後の方だったような気がするわ。凄いクドクド言いづらそうに実は実は、って何か言おうとするんだけど、なかなか言わないのよ。やっと言ったと思ったら、私は欠陥狼女ですって。私気が抜けちゃったわ」
そのエピソードに、先ほど合流した柊と鈴菜が付け加える
「そうだったね。私もその時に有姫ちゃんと一緒に知ったんだけど、景ちゃん緊張してたよね」
「うちは狼女って知ってたけど、そんなんてっきり私やっぱりあんたのこと好かんわって言われるとでも思うわな。だって有姫、犬姿の景のこと蹴っ飛ばして流血させてんで」
懐かしい話にライは目を見開いて「そうじゃん」と有姫を見る