一晩明け、夏休み最終日
LOS当日
「えっ。景、LOS行きたいの?」
「うん.....」
男子寮Bのダイニングスペースにて昼食の支度をしながら、咲夜に問われて景は恐る恐る頷いた
「そりゃ、なんでまた?」
咲夜と一緒に昼食の支度を手伝ってくれている市河にも、どのような心境の変化があったのかと不思議そうな顔をされる
さらにその場にいた、特に二年生の爽馬、相生、さらに千冬、弥隼、満宵も彼女に注目した
それもそのはず
昨晩LOSに行くことに最も良い顔をしなかったのは彼女自身だったのだから
「さっき図書館で勉強してきたときに、鈴菜ちゃんにLOSに行こうって誘われたの」
午前中は夏休み明けのテストに備え、各自が寮や図書館で勉強していた
そのときに鈴菜から誘われたのだと説明すると、満宵から意外そうな声が上がる
「うそぉ、鈴菜ちゃんってそういう俗っぽ.....お祭りっぽいの好きなのー?」
「鈴菜“先輩”やから」
咲夜は弥隼のツッコミに頷きつつ
「好きではないだろうなー。文化祭の後夜祭の時も、一人で人気の少ないところフラフラしてたし」
と憶測する
何を隠そう彼女より先に人気の少ないところで一息ついていたのは自分自身だが、そのことは完全に棚に上げているのは秘密だ
景は「みんな鋭いな」と苦笑いし、誘われた理由を説明した
「なんかね、私にはよく分からないんだけど、私たちのクラスの凪が吹奏楽同好会のコンミス?っていうのに選ばれて、LOSで演奏するんだって。だからクラスの女子たちで見に行こうって」
「「へぇー」」
何となく察したものの、コンミスなる存在の重要度がパッとしない男子たち
それに唯一知識のある千冬が気がつく
「ほら、コンミスっていわゆるオーケストラでは最前列、下手側の一番端で演奏して、最後には指揮者と握手やハグを交わすポジションの人ですよ」
「「「あー」」」
「ブラスバンドじゃそこまでの演出はないけど、大体クラリネットパートで一番技術がある、リーダーを務める人が座って、演奏前に客席に向かって礼をするんです」