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相生によるところ、つまり話はこうだ
それは昨晩のこと
寮の自室でウィスキーを飲み軽く酔った彼は、屋上を訪れ10分ほど夜風に当たっていた
もちろん未成年がウィスキーを飲んでしまっている時点で彼には罪があるのだが、そこを気にしていると先に進めないのでそこは保留にする
誰もいない人気の無い屋上で風を浴び、気が済むと踵を返して屋上の重い扉を開ける
するとその先の薄暗い階段の途中に、こちらに気づいて怯える女子生徒の姿があった
彼女のことを以下、女子Aとしよう
______男子寮に、女?
驚いた相生は立ち止まるとよく目を凝らして、女子Aを見下ろし凝視する
見知らぬ男子生徒に見つかったことに慌てた様子の彼女は、上を見上げ声を押し殺して「言わないで!」と懇願した
もちろん面倒ごとに巻き込まれたくはないので、自分は見知らぬふりをするまで
相生は女子Aの言葉に無視をして階段を降りた
すれ違う間際、電話中だったのか
「呼び出したのそっちじゃない。早く来て、人に見つかっちゃった。うん.....多分大丈夫」
と、相生を横目に気にしつつ電話先にお願いする女子A
彼女が履く寮内スリッパの赤色が3年生であることを示していた
______なるほど、高校3年にもなってこんなところで逢瀬を楽しむ馬鹿どもが本当にいるとは
内心呆れながらも関係ないことだと、去る足を早めたとき
「誰だ!?」
偶然にも、見えない男の鋭い声が階下から聞こえた
女子生徒の声が聞こえてしまったのだと、瞬時に悟った