「あの、黒木さん……?」
「はい」
「一度、離していただけますか?」
そっと体を離されて正面から見たその表情は。
「なんて顔してるんですか……」
見てるこっちが泣きたくなるような、後悔の念が刻まれた苦しそうな顔。
そんな顔して欲しくない。
いつものクールで飄々とした黒木さんに戻ってほしい。
「あの……別に私、怒ってなどいませんよ?というより、逆に感謝してるくらいですし」
「感謝?」
「そうです」
まっすぐ顔を見て言うのは恥ずかしかったから、体の向きを黒木さんではなく、ベッドの側面と同じ向きにする。
「その……一方的に服を脱ごうとしたのは私ですし、そう思われてもおかしくないです」
「ですが……」
何か言おうとしたのを手で遮った。
「黒木さんに言われてなかったら、たぶんこれからもああしてたと思いますし、きっとなんてバカな女だと思われると思います」
前の元カレの時も一緒。
自分1人が浮かれて、思い込んで。
勘違いして。
甘えられない部分も、私の可愛いところだと言ってもらえてたから。
内心は、なんて可愛くないやつなんだと思われていたことにショックでしかなかった。
それと、同じ。