お嬢様、今夜も溺愛いたします。



「けど、本当はつらいことばっかりだったんだよね。というより、苦しいことしかなかった」


「うん……」


テーブルに置かれた、震えるその手を包み込むように握れば、じんわりとそのあたたかさが胸に染みる。


「女なのにって。男の制服着て気持ち悪いとか、まあ散々。いじめに遭ったこともある。友達だっていなかったわけじゃないけど、親友って呼べる子なんて1人もいなくて、結局は……ずっと1人ぼっちだった」


私と、同じ………



「だからさ、嬉しかった。俺の話を特に気味悪がることなく聞いてくれた美都が。初めてだったから。そんな優しい子に会えたのって」


そう言って、涙ぐみながらも、私の両手をぎゅっと握り返してくれた紗姫。



「なんとなく……なんとなく、なんだけど。美都、甘えるのとか、苦手だろ?」



「え……?」



「分かるよ、俺も。そういうの、キャラじゃないし、こんな見た目だし。俺が話しかけるまでずっと無言だったし、どこか諦めたような表情だったから」



「……………」



気づいて、たんだ……


私とは価値観が違いすぎるし、話も合わなさそうな子たちばっかり。


だったら別に1人でもいいし、友達なんて作らなくてもいいと思ってたくらいだった。


「だから、声をかけた。この子は自分と似てるかもって」


「紗姫………」


じわりと視界が歪んで、私の頬を冷たい雫が落ちていく。


「美都には俺がいる。俺がいるから。今まで我慢した分、俺にはどんどん甘えて頼ってくれていいから。つらかったり、苦しかったり。それだけじゃなくて、嬉しい時も楽しい時も。俺は美都の傍にいるから」


「さ、き……っ」


「1人の友達として、俺は美都の助けになりたい。だから美都も……こんな俺の、友達になってくれる?」


「っ、もちろんだよ……っ」



嬉しさと切なさが喉の奥から一気に込み上げてくるようで、我慢できなくて。


思わずガバッと抱きつけば、紗姫も泣きながらも、笑って抱きしめ返してくれた。



「紗姫、目真っ赤じゃん」

「それは美都も一緒だろ?」



体を離せば、2人とも目を真っ赤に腫らしていて。

顔を見合わせて、お互い堪えきれずに噴き出した。



あたたかくて、優しい紗姫の心。

それはどこか胸にじんわりと広がっていくようで。


お母さん、お父さん。


私やっと、心から大切にしたいと思える友達ができたよ。


生きる希望がまた1つ、増えたよ。