お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「美都、村上って名乗ってたし、もしかしてと思ってたけど……まさか、祖父の苗字知らなかったりする?」


おじいちゃんの、苗字……


そういや、



「知らない、かも……」



聞いてなかったし。



そう言うと、紗姫はびっくりして箸を落としてしまった。



「え、マジで?」


「うん」


「じゃあ、皇財閥がこの学校に通う生徒の親の中でも、トップクラスのお金持ちってことも知らない?」


「ええっ!?
そうなの!?」


「…………」


だから、朝教室で、トップクラスがどうのって噂されてたんだ……



おじいちゃん。

そんなにすごい人だったのか……



「オーマイガー」



口をポカンと開けて驚く紗姫に、私は意を決して昨日までの話をすることにした。


両親が亡くなって、大好きな人にも裏切られ、自殺しようとしている所に、黒木さんが来たこと。


昨日初めておじいちゃんの存在を知って、お嬢様になったことを全部話した。


「なんか、ごめん……
つらいこと、思い出させるようなこと言って」


「ううん、大丈夫……
って、紗姫?
泣いてるのっ!?」


俯いて喋ってたから気づかなかったけど、紗姫は目が充血するほど泣いていた。


静かだとは思ってたけど……まさか、泣いてたなんて。


「だって……自分を追い込んでしまうほど苦しい思いを、こんなに優しい美都がしてきたと思うと我慢、できなくて」


「紗姫……」



さっきまで大笑いしていたのが嘘かのように、ぽたぽたと涙を流し続ける紗姫。


その姿に、胸がぎゅうっと締め付けられた。



「……俺さ、さっきめちゃくちゃ軽い感じで自分のこと話したじゃん?」


「うん………」