両親が亡くなってしまった以上、親権はおじいちゃんにある。
十夜さんは誰よりもおじいちゃんに認めてもらいたくてずっと頑張ってきた。
だから。
「お嬢様と生きるために私は、必ず旦那様の許しを得たい。その上でお嬢様と幸せになりたいのです」
そう言ってくれた。
「私からもお願いします」
頭を下げる十夜さんを射抜くような鋭い目で見つめるおじいちゃん。
「私も十夜さんと生きていきたい。
十夜さんと歩んでいきたい。だから、お願いします」
十夜さんの横で私も頭を下げた。
この気持ちが届くようと。
「………」
シーンとなる部屋の中で時計の音だけが響いている。
でも尚も十夜さんと私は頭を下げ続けた。
「二人とも。顔を上げなさい」
その言葉にゆっくりゆっくり顔を上げれば、おじいちゃんは泣きそうな顔で私たちを見ていた。