「その話を聞いたのは二人が亡くなって数日経った後だった。俺は皇財閥のお嬢様が星水に転校してくることになったって聞いて、すぐに旦那様に会いにいった」


「え、おじいちゃんに?」


「うん。
美都の専属執事をやらせてほしいと、小さい頃俺が生きる希望をもらった分、今度は俺が美都を支えたいって」


「十夜さん……」


「美里さんにはお世話になってたし、圭人さんともよく話してた。けど手術が成功して俺は結構遠くに引っ越してしまったし、連絡先も知らない。だから二人が亡くなったのも、両親が人づてに聞いてきた話で知った」


「あ。だから、しばらく経った後に知ったって……」


「そう。
情けなかったよ。自分の好きな子が一番つらい時にそばにいてあげられないようじゃ、いくら学力があっても、容姿が整っても、意味がないんだって」


「旦那様に頭下げに行った時は本当に驚いてたよ。まさか美都に会うために星水に入るなんてって。旦那様とは小学生以来会ってなかったけど、すぐに俺だって気づいてくれた」


ふわっとおでこに口づければ、ゆっくり顔を上げた美都。


「美都との思い出と、このガーベラはずっと俺の生きる希望だった。佐藤さんと会った時も同じことを言ったんだけど」


「佐藤さん?」


「うん。
前に美都がガーベラのブーケをもらってたあの佐藤さん。本人から聞いたかもしれないけど、入院してた頃よく話したんだ。俺が美都から生きる希望をもらったように、佐藤さんも美都や圭人さんの作ってくれたガーベラの花束に救われたって」