「お前、美都のこと好きなのか?なんてものすごい形相で聞かれたこともあったっけ」
「ええっ!?」
「その時に言われた。美都と結婚したいならば、わしが納得するほどの男になれと。そして早く病気を治して元気になれと」
「おじいちゃん……」
俺を見る目はなかなかのものだったけど、優しい言葉もたくさんくれた。
病気が治ったらこんなに美味しいものが食べられるようになるとか、好きなように運動ができることも。
美都が姿を見せなくなったのは、俺が旦那様に見定められているから。
俺が立派な大人になって迎えに行けるまでは会わせる気はない。そんな風に言われてる気がして。
「だから、星水学園大学に入学したんですか?」
「そう。
知らない人はいないほどの大学。旦那様もそこを卒業したって聞いたから、とにかく猛勉強した」
「そこまでして、私に……」
「そうだな。
美都に会えなくなったのは勘違いだったけど、美都に会えるためならって、いつもこの押し花を見て奮い立たせてた。それくらい、美都のことが好きでたまらなかったから」
けど、そんな時。
大学3年になった9月のある日。
俺は美里さんと圭人さんが亡くなったことを知った。



