お嬢様、今夜も溺愛いたします。

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「それで私、気持ちに蓋をしたんです。
初恋だったけれど、仕方ない。
もう一生会えないんだと思ったから」


だから十夜さんと会ってしばらくしても、よるくんのことを思い出すことができなかったんだと思う。


初恋の人が亡くなるなんて、まだ小2だった私には受け止めきれなかった。


尚もこぼれ落ちてくる涙を指で拭えば、十夜さんはなんともいえない顔で笑っていた。


「あーまあ、あの時手術が成功したって分かってすぐ個室から大部屋の方に移ったからなぁ。
美都が勘違いしても無理はないかも」


「だってベッドも空いてたし、お母さんに聞いても教えてくれなかった」


「あの時美里さんに美都に成功したって伝えてくれって言ったんだけど、美都は泣くばっかりで聞く耳をもたないって」


「………」


それ絶対、私の思い込みのせいだ。

よるくんが亡くなっちゃったと思ってずっと泣いてたから、たぶんお母さん私の勘違いに気づかないまま呆れちゃったんだと思う。


「にしてもあの押し花、よく今まで持ってましたね」


「そりゃあ、初恋の子からもらった何よりも大事なものだから」


そう言うと、十夜さんは穏やかな目をして話し始めた。